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WILCO
WILCO アーティストレビュー

Wilcoの新作「A Ghost Is Born」でJeff Tweedyはみんなをガッカリさせようとした訳ではない。今回は彼は自分自身を元に戻すのに忙しすぎたのだった。

「僕はただ死にたかったんだ。」Jeff Tweedyはもう少しで彼の願いが叶うところだった。2004年の春、彼のWilcoとしての5枚目のスタジオアルバム、「A Ghost Is Born」(Nonesuchレーベル)のリリースの数週間前に、彼の絶え間無い鎮痛薬の服用、吐き気をもよおす片頭痛、そして体を麻痺させるパニック発作の曲芸的な行為が彼の上に大きな音を立ててのしかかってきたのであった。

1991年に遡ると、Jeff TweedyはUncle TupeloのJay Farrarとルーツとロックを見直している真っ只中でアルコールをやめた。「それは本当に良い事だったよ。でもその事で僕は他の事もやめられると考えるようになって、お酒を飲まなければ、大丈夫と思う様になってしまったんだ。」彼の妻と2人のまだ若い息子が一緒に住むシカゴをドライヴしながらTweedyは説明してくれた。「問題は僕が自分で治療する他の事を見つけた事だった。 で、医者が『これらの片頭痛に効く唯一の鎮痛薬だからこれを飲みなさい。』と言っても僕は慎重であったよ。」

片頭痛は決して消える事はなかったがTweedy特有の常用癖のつきやすい個性はVicodin(鎮痛剤)や他の処方薬をどうすればよいか知っていた。「僕は24時間中鎮痛薬を飲んでいたよ、まだ頭痛がするかなんて気付きたくなかったからね。」とTweedyは言う。それでも彼は酒を断つのと同じ方法で鎮痛薬に打ち勝つ方法を見出した。疑いなく、36歳の彼は3年前に酒を断ったパンク青年より賢くしっかりしていた。---彼は単純に薬を断ち、体が自然に治っていくだろうと。

「本当の問題は僕がやめた時におこったよ。」と彼は言った、「僕は自分の体に物を入れる事をあまりにも恐れるあまり、全ての薬を服用するのをやめてしまったんだ。」これには彼の深刻なパニック障害、彼が何年も苦しみ続けてきたもう一つの慢性の症状、その為の錠剤も含まれていた。「ピュアでありたいという気持ちが頭に入り込んじゃっていて僕は完全に脳の化学反応を破壊してしまった。なぜなら脳が一度鎮静剤を経験すると、脳は安らぎを維持する為の化学物質を作らなくなるんだ。だから僕は一日中、毎秒が1年に感じるようなパニック状態のまま過ごしていたんだ。」

そのパニックは結果的にひどくなり過ぎてTweedyは2日連続で緊急治療室に担ぎ込まれる事になった。一度目は、彼は精神安定剤を打ってもらい家に帰された。しかし2度目の訪問(別の精神安定剤の助けの後なのだが)では、彼は2つの診断、特に中毒と精神病を取り扱っている治療施設に委ねられた。「登録してくれ。」がTweedyの反応だった。「僕は閉じ込められたい。僕はまともに機能していないから誰かに殴られて気絶したいんだよ。」

Tweedyの妻が車で送り迎えをし、リハビリが始まった。「僕は助けを求める事を全く恥じていないよ。」Tweedyは言う。「回復中にわかった事で最も大きいのは一人じゃないって事。自分は実際人生を立て直した誰かが経験した事を経験しているんだと。でも入院した時は僕は精神的な健康については絶望していたよ。もう一度正常になるとは思っていなかった。」「正常」の解釈は人それぞれだが、リハビリの裏側でJeff Tweedyは死を請う事から「とても良くなった。それは僕の人生の中で最も悲惨な経験の一つだったと同時に僕がやり遂げた中で最も素晴らしい事の一つだったよ。」と言うようになった。

しかし副作用もあった。リハビリの滞在の為、Wilcoのアルバム「Ghost」の為のツアーの初期の日程は取りやめになった。それには巨大なCoachella festivalの重要な出番も含まれていた。Tweedyはそれまでの人生で一度もショーを逃した事はなかった。

ツアーが始まって最終的にIrving Plazaの汗びっしょりのギグの為にニューヨークに乗り込んだ時にはTweedyはとても変わっていた。そしてバンドもとても変わっていた。Tweedy とベースプレーヤーのJohn Stirrattが10年前に結成されたWilcoのオリジナルメンバーとして残っていた。新作ができあがったらLeroy Bach( 2002年のJay Bennettのつらい離脱の後に主にたくさんのパートを任せられていた)はもうたくさんだと感じた。

サイドプロジェクトであったThe Autumn DefenseのメンバーでStirrattの友達であるPat Sansoneはギターやキーボードや必要なもの全ての補強をする為に呼ばれた。ステージではSanaoneとStirrattはTweedyの左にいる。彼等の演奏はとても安定している。彼等は(映画の)「Last Waltz」の様に素晴らしい。彼らは交互に乱暴でやさしく魂に満ちている。

計画的であるかのように、Tweedyの右側は新しいWilcoのより人目を引く証拠があった。10分の「Spiders(Kidsmoke)」のジャムセッションの間にNels Clineはしっかりしたワンコードのノリの前衛的なジャズの6弦で彼のギターを弾き、とがった感じの表現力のあるTweedyの演奏と会話を作り上げている。それは「Ghost」からの曲では音楽的に耳障りなものであるが今夜はよりゆったりとした感じに聞こえた。より情熱的で、より冒険的でもあった。

Clineの後ろではMikael Jorgensenがキーボード、ケーブル、ノブ、そしてノートパソコンを使ってふざけた感じで演奏している。簡単に言えば、それは全ての演奏が終わればバンドのどちらかしか生き生きと浮かび上がってこない事を十分理解した上で、Neil Young & Crazy HorseとKraftwerkが一緒に演奏しているといった感じだ。

Tweedyの真後ろにはWilcoの左右の脳を取りまとめるドラマーGlenn Kotcheがいる。彼はKen Coomerがとても重要で愛しいアルバム「Yankee Hotel Foxtrot」---Reprise Recordsが「それは私達じゃない、君のせいだよ。」と言ってWilcoと決別するのを促したアルバム---のレコーディングの始めに解雇された2001年に現われた。Kotcheの存在はTweedyにとってWilcoのalt-countryという先入観を超越してWilcoをアルバムごとに再イメージしていく為のおおきなきっかけとなっている。

「Glennがどれほどバンドに影響を与えているかを数えるなんかできないよ。彼はとてもオープンマインドで熱心だよ。」Tweedyはまるで彼が14歳に戻って高校で兄弟の「LondonCalling」のレコードを使い古した少年に出会った様に話す。「Glennは世界に対して広い視野での驚嘆の念があって、それが彼の演奏に出ているんだ。それは振りをしたりできるものじゃないさ。僕はさらに視野の広く、楽観的な姿勢でそれに反応して、バンド全体も反応するのさ。バンドはずっとGlennのテクニックの部分と冒険心にチャレンジされているんだ。」

Tweedyが他のメンバーと本当の意味で協力的である事に過去に問題があったのではないかと言われると、彼は注意して先制的に明確にした:彼は強調する。「いつも自分のバンドではあったさ。でも本当に分かち合いたいんだ。僕にとって本当の協力はみんなが一つの志を持って演奏するのに全霊を注いで、みんなが自由に感じて、音楽をつくるというプロセスに集中する事なんだ。それが僕が最も大事にしている事だし、僕がこれはバンド、だからWilcoって呼ぶ、僕や僕の作品にとってのただの伝達手段ではないということが全く確かであるという事なんだ。」

正真正銘のドキュメンタリー「I Am Trying to Break Your Heart」の中で、映画監督のSam Jonesは「Yankee」の制作周りの個人的な事や音楽ビジネスのドラマの多くを記録している。(バンドの歴史はシカゴの音楽記者、Greg Kotによるとても興味深い新作「Learning How to Die」でより明らかにされている。)

TweedyはRepriseに振られた事、Jay Bennettの離脱、その他の残り全てについて心を打ち明ける事に問題はない、それは過去のことなのだ。Wilcoの成功への鍵(そしてTweedyの精神の健康状態)は過去のことではない。「音楽を面白いまま維持する方法はリスクを払って過去に効果のあったものを捨て去って、同じ様に又はより効果のある新しいもの見つける事さ。」

彼は言う、「それはもう一つ上のレベルに持っていくという事ではないんだ。それは自分がその瞬間に世界をどの様に見ているかを最も正確に描写しているレコードを作るという事だと思うよ。どのように成長してどのように(バンドとして)変化してどのように音楽を違った視点で捉えているか。自然に、毎年違ったレコードをつくりたいからね。」

もし「Yankee Hotel Foxtrot」がTweedyとWilcoがスタジオで作ったものの中で最も野心的なものであったとすれば、「A Ghost Is Born」はレコーディングが始まる前にグループが行った最も冒険的なものである。「この前僕達は歌詞に即した雰囲気をつくる為にたくさんの音響機材を使ったけど、今回はコード進行や調や演奏といった音楽の道具が、前回スタジオで割いた多くの時間に操作した全ての事をするようにしたんだ。」

Tweedyは説明する。「レコードで効果を上げるアプローチはより直感的で閉所恐怖症でない感じ、「Hell Is Chrome」の様なより憂鬱なトラックやスピーディーでパンク調の「I’m A Wheel」の両方そうなんだけど。」「多くの人があれは本当に馬鹿げたロックソングだと思ってるみたいだ。」

彼は笑って言う、「で、ポイントは?」そのトラックは確かに彼がレコード全体に追求している荒々しさや緊迫感がある。Sonic Youthの新しい5番目のメンバー、Jim O’Rourke、Tweedyが(一番の親友と言わないにしても)親友の一人と言っているのだが、「Ghost」の共同プロデューサーとして関わり、Tweedyに良い特権を提供している。「Jimは多くのプロデューサーがもうしなくなった本当の伝統的な役割を果たしてくれたんだ。」

Tweedyは言う、「彼はミキサーボードの後ろに座って『良かったよ。』とか『クソだったね。』とか『少し遅めのテンポでトライしてみよう。』とか言ってくれてた。今回僕達はそれが必要だったんだ、なぜなら前回のレコードでは僕達はたくさんの時間をコントロールルームで過ごしてしまったから。「Yankee Hotel Foxtrot」をツアーで演奏した後、僕はその方法でレコーディングすればよかったと思ったんだよ。

今回は僕達はレコードを仕上げて、習得して、ニューヨークに行って、うまくいったんだ。」O’Rourke同様、心強いTweedyのギター演奏の本能も(アルバムに)貢献している。「Spiders(Kidsmoke)」や「At Least That’s What You Said」のギターソロや勢いあるギターはアルバムの中で最も芸術的なメッセージである。「それはアタックと演奏の感情的な内容についてだよ。音符よりフレーズについてかな。」Tweedyはそう言いながら、先天的で根本であるものについて深く考えないようにしていた。

これらの荒々しいギターの金切り音の中に「蜘蛛がミシガンのプライベートビーチで確定申告書を記入している。」といったTweedyのいよいよ想像的な歌詞が心地よくのっていた。新しい歌詞の芽の多くはTweedyの詩で埋まったノートに見つける事ができる。(彼の第一集「Adult Head」はから今年の始めに出版された。)「僕は紙面で見栄えがいいように詩を仕上げようとしてそれから曲の為に詩をラインとして流用するのさ。」Tweedyは説明する、「それから拍子を変えたりして音楽的な韻をみつけるのさ。僕は紙面上では自由詩を書くけど歌詞においては韻がある方がもっと楽しいからね。」

あるファンにとって、Tweedyの不透明な歌詞は(厄介でないとしても)議論の源である。例えば、「Yankee Hotel Foxtrot」の出だしのライン「僕はアメリカの水族館を飲む人だ。」はファンクラブのホットな議論である。レコードを崇拝するリスナーでさえ「最もバカな出だしだ!」と叫ぶ。Tweedyは笑ってこう言った、「それはかなり分かりきったラインだと思うよ。僕は最も良いラインって言うのは僕が最も不快だと感じるものだと思っている。それがどんな意味なんて関係ない。それは誰かが耳にした時に感じたものがその意味なんだ。僕がそれを聞いた時に感じたのは、とても混乱した誰かから発せられた様な感じがしたよ。」

ステージに立った時、Tweedyはリスナーが彼の意図する意味を得るなんて気にはしていない。彼はただステージに戻る事ができてハッピーで誰かが聴いてくれている事がうれしいのだ。彼がリハビリに入った時、「A Ghost Is Born」の発売日は数週間遅らされた。「Yankee」でやった様に、Wilcoは発売前に公式サイトでレコードのストリーミング配信を始めた。

しかし前回同様、発売日の数ヶ月前に新作のデモのダウンロード可能なMP3はウェブサイトや世界中のWilcoファンのハードディスクに行き渡った。「そうさ、世の中には音楽を盗む連中がいる、でも本当に、本当に音楽が好きで芸術の後援者の様に扱われたいと思っている人もいる。彼らは消費者じゃなくファンとして扱われたいと思っているし、彼等の多くは本当に正しい事をしたいんだよ。」Tweedyはそう言って、アルバムをダウンロードした多くのファンが「justafan.org」と言うサイトを通じてお金を寄付しているという事を指摘した。そのお金はWilcoの元に届くのではなく「Doctors without Borders」の様なチャリティーに送られる。

レコードの普及を止める為にバンドができる事があまりないのを悟りながら、Tweedyはそれを最良の視点でとらえていた。「彼等がやった事はいい事だと思う。ダウンロードについて騒いでいる連中のほとんどはレコード会社の本当にリッチなバンドだよ。僕は彼等に(作品を)盗まれているという点では同情するよ。でも僕はそれとは全く違う関係で存在している、なぜなら僕は長い間ライヴをする事で生計を立ててきた、だから僕達の音楽を聞く人が増えれば増えるほど何かが起こりやすくなるのさ。

僕は誰も僕らのレコードを聴いてくれないよりはむしろ、誰かが僕らのレコードを聴いて、好きになってくれて、買ってくれないほうがましだと思う。なぜなら僕は人に音楽を聞いて欲しい、それが僕が音楽を作った理由だからね。」
 
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